2012年7月30日月曜日

草取り 〜七月の軽井沢

みなさんは避暑やレジャーで軽井沢に来られるのだと思うが、私はいつもKzさんのお仕事の関係で来るので、東京の家が軽井沢になっておさんどんをしているだけで何かちっとも優雅ではないのが玉に傷だ。

移動する時間と掃除をする場所が増えるだけ・・やれやれ

7月の軽井沢は雑草の季節。
来る度に草取り、又草取りだ。
しかもそのときその時ではえてくる雑草が違うから始末に悪い。
まあ、草取りは頭が空っぽになって、たまにだったらそんなに悪い仕事でもないのだが。

今年も又、根を地面の低い所を這ってはえる、竹の子供のはっぱみたいなあいつが巾をきかせている。前回に来た時はまだなかったやつだ。抜きにくくて本当に腹が立つ。

ひょろ〜んと長く伸びているのはひょいっと引っ張ると抜けるからまだよいのだ。

のび太君が文句を言いながらドラエモンと一緒に庭の草取りをしていたのが良く分かる。
汗だくで報われない仕事。

こんなに毎回草取りをしているのに我が家の庭はまだどこかの空き地並みに殺風景だ。
去年ツルヤで景品にもらったラベンダーが一株だけやっと生き残っているだけだ。あとは買って来た株たちもみんな雑草に飲み込まれてしまった。
庭いじりが好きだった実家の亡くなった父がふらっとやってきてくれると良いのに・・・。

風のガーデンみたいになるには何年かかるだろうか?


2012年7月26日木曜日

弱音を吐こう介護日誌(32)〜驚異の記憶力! 〜メルシー、越路吹雪さん♪

今日のオババのアクティヴィティはカラオケ大会だった。

オババは歌が結構好きなので、「行ってみたら?」と薦めてホールへ。

進行があまりにも下手で、老人たちが知っている曲が全くない!つまらないので私だけそっと部屋に戻って来た。

すると、少ししてオババも戻って来た。
「歌おうと思っても知っている曲が一つもないよ〜」と残念がっている。
「あれは進行係の勘が悪すぎるよ、選曲がなってない!みんなを何歳と思っているのかしら?」

そこで消化不良のオババの為に何か昔歌っていた歌がないかなあ〜?と必死で思い出した。
お皿を洗っていると鼻歌が聞こえて来たなあ・・・ムムム・・・「そうだ、サン・トワ・マミーだ!」いつも歌っていた。
記憶が全てすっ飛んでいるけれど、歌は歌詞を見ると歌えるから、試してみよう!

「ふたりの恋は〜終わったのねえ〜♪」私が歌い出すと
「ゆるしてさえ〜〜くーれないあなたあ〜〜」と気持ち良さそうに続く。
「ええっ!!お母さん歌詞覚えているの?」
オババがポカンと嬉しそう。
「どうして歌えるのかしら?でも音がはずれてるし声も出ないけど・・・不思議ねえ」
メロディーはともかく歌詞が出て来るとは思わなかった。脳のどの部分なのだろう?同じ記憶でも壊れているところと壊れてないところがあるの?

私は脳の専門家ではないから分からないが、専門家に聞いてみたい気がする。
ホームの精神科のドクターはまじひどかった。全くひどい診断だったから頼る気にもなれなかった。日本の精神科の医療のレベルはまだ低いのだなあと思ったが、、、

これから何かを引き出して、彼女の失ってしまった記憶を取り戻す手がかりにならないものだろうか? 浜田先生〜〜!! 先生がいらっしゃったら相談したい。

母は越路吹雪の歌が大好きだったので、愛の讃歌、誰もいない海、と歌うと所々歌詞を思い出して付いて来る。
しかし何よりも「サン・トワ・マミーだ!」歌詞はメチャメチャだし一杯抜けているけれど嬉しそう、これで勝負をかけよう!!

正しい歌詞をiphoneで調べて、日記帳に書き出す。
一緒に歌う。
ちょっと変な所は直してあげると、直ぐ直る。
次は一人で歌って!
「パーフェクト!」直したところが完璧に直っている。昔教えた時よりずっと覚えがいい。
ホーム長さんのお名前を何度言っても直ぐに忘れてしまうのに、今持って行ったばかりのゼリーのことは直ぐ忘れてしまうのに、歌詞とメロディーは覚えている、定着する。

何だか二人で涙出しながら喜んだ。
少しでも記憶が残っているって!!教えた所が記憶として残るなんて!!!
こういうのを希望っていうのかもしれない。

理論的に脳の○○分野だから〜〜云々なんて言われるかもしれないけれど、どうでもいい。彼女の脳に歌が定着した。歌詞が定着した。何も覚えられなかった母が歌詞を覚えた、それだけで最高に嬉しい!

merci beaucoup! 越路吹雪さん!
次は『ラストダンスは私と』だな。

2012年7月25日水曜日

老いを生きる意味 浜田晋

精神科の診療室から
                  岩波現代文庫

Kzさんの本棚にあった本なのだが読み始めたら面白くて夢中になってしまった。

できればおばあさんはこんな先生の近くに居れたら良かったと思う。

先日NHKのプロフェッショナルで老人介護福祉士の和田行男さんの取り組み方を観て、すごいなあ〜と感心した。認知症の老人をあくまでも普通の人として接するために弛まない努力を続けているのだ。でも私にはとてもできないと思った。力が入り過ぎている。
実際に母の面倒を看て来て、あんなに一生懸命やったら自分がへたばってしまうと思った。

この浜田先生は、大きな病院の精神科から始まって色々感じ、最終的に自分のクリニックを開き、町の医者になった。この先生のやっていることと自分の姿勢が偉大さは全く異なるが力の抜き具合が似ていると思った。

丸ごと受け入れる、無理をし過ぎない、強要しない。

アメリカの老人ホームで、月一でラマ(マチュピデュなんかにいる平和なお顔の優しい動物)が訪れる。ラマは大人しくて匂いがないので老人たちの人気者だ。みんなラマを一番喜ぶらしい。口をきかないでじっとしているだけなのに。
みんなが飛びつく程好かれているという。

しかし驚くのは、ホームから戻ったラマである。くたびれ果てて、2〜3日はぐったり横になって、食事もとらないらしい。

自分と重なって笑ってしまった。
生気が吸い取られてしまうのだ。だからとても疲れる。老人に快くサービスするのは大変だ。老人はわざとやるとすぐに見抜いてしまうから、あくまでも自然体でないといけない。それをキープするには回復にかかる時間を見積もっておかないと自分がへたばる。

今日も見事、負のエネルギーが一杯でぐったり戻った。

機嫌良く、丸ごと受け入れて、ひたすらともにいること。
わたしもラマになりたい〜

一つ印象的な引用を:

人は人である以上病むことからのがれられない。そして苦しむ。ひたすら一人で耐え忍ぶ。しかしである。
病は一方で、人間が人間である深い苦悩の中から、英知を「人間」にさとらせることがある。病むことなしには人は自らの「本質」にさえ気づかない。自らの中にあるいくばくかの「病める心」に気づき、かかえこむことなしに人は人でありえないのではないだろうか。


2012年7月22日日曜日

『ラテンアメリカ十大小説』 木村榮一

岩波新書

この本はラテンアメリカの錚々たるお顔ぶれの作家と作品の案内書である。

今まで読みたいものをただ読んでいたので、色々な角度からバラバラにラテンアメリカの文学が入り込んでしまい、作家や時代や背景がごちゃごちゃしていた。頭の中を整理するのにとても役立つと思う。

木村さんは本当にたくさんのスペイン語の作品を訳しているかたなので、とても物知りでしかも作品を奥深く読んでいて楽しかった。私の読んだ中では『精霊たちの家』『黄色い雨』などがある。

10人の素晴らしいラテンアメリカの作家の紹介をしてくれているが、それぞれの個性と共通点が比較できるのでとても面白い。ただ外国で暮らしたことのある作家がほとんどなので、やはり海外を知ることは大事なのだろうなあ、と感じるが。

ラテンアメリカの独自の文学スタイルが何故産まれて来たか、『ブーム』は何故起こったか、そんなことが自分なりに肌で感じられるような気がします。

もっともっと作品を読んでその世界に入り込んで行こうと思っています。
自分的には、フリオ・コルタサルのあたりが好きです。

イザベル・アジェンデは、この夏の講座のテーマです。楽しみ、楽しみ・・・

2012年7月21日土曜日

弱音を吐こう介護日誌(31) 〜ある日の会話 〜オババのホームにて


最近あまり一週間が過ぎるのが速いので、

ソラ「月日の経つのは速いわねえ」
オババ「ほんとにね。ところでソラちゃんいくつになったの?」
ソラ「61歳!」
オババ、ものすごいオーバーアクションででかい目を更にまん丸くして、初めて知った、こんな驚きはないというお顔。

「へぇ〜〜〜〜ぇ!!!ほんとに???あんたもうそんな歳だったの???」
(確かこの間還暦を過ぎたと話したけど、頭に入らなかったな)
「そうよ、そうなの、もう還暦過ぎてるんだよ」

オババ、覗き込むようにじっと私の顔を見て、お茶目な目つき
「聞くんじゃなかった、ああショック・・・」

なんだよこのリアクション、私の方がはるかにショックだぜ。
言うんじゃなかった。
90のババアにおちょくられたぜ。

2012年7月19日木曜日

弱音を吐こう介護日誌(30) 〜嫁と娘

オババの所から戻った。

帰りがけに部屋を出た途端にお会いしたので、母の斜め右前のお部屋のSさんと立ち話をした。とてもしっかりした優等生タイプのかただ。

「いつもお世話様です」
「あらあら、さすがお嬢さんねえ〜」
「えっ?何か?」
Sさんニコニコしながら「お嫁さんは、大事に大事に手を添えながら歩いて行くのに、お嬢さんはさっさと一人歩きさせてるのね」(もちろんオババはシルバーカーは使っているが)
二人の対比が面白かったらしい。

私はすかさず、「そうなんですよ、厳しい娘で。何も手伝ってあげないのです。トレーニングのつもりで、さあ、これして、あれして!惚けちゃうよって」
オババが口をはんさんで、「しかも、会えば直ぐけんか!」
なんでこのタイミングでおっしゃる、おばーさん。

すると、斜め左前のお部屋の小柄なおばあさんが突然顔を出した。ドアにつかまって子供みたいな目でじっとこちらを見ている。
Sさんが「Oさん、一人で歩いたら危ないですよ。」と言いながらニッコリして「来年の4月1日で100歳なんですよ。エイプリールフール、珍しいでしょ」とおっしゃるのでビックリする。
そのキラキラ光る目は目力があって、めちゃくちゃ若いのだもの。
オババは話の内容がつかめていないのできょとん。

「え〜〜!!本当に100歳ですか? 4月1日とは・・・うちの母は1月1日なんですよ、しかも大正11年の1月1日 90歳です」
Sさん「あら、おめでたい」
100歳のOさん 「まだ、若いじゃないの〜」
私「ん・・・?」

でも、Oさんは自分の歴史をとうとうと話し出したから、、、やはり100歳かな?
さすがに老人ホーム内での会話だった。

が、あとで車を運転しながら考える。
あのお嫁さんとの対比は、私の母の扱いが乱暴ということだろうか?
お年寄りの言う事はあなどってはいけない。
義姉に比べて目に余ったかな? と、少し反省。

お姑さんには絶対あんな扱いしない。あきらかに嫁と娘とは違うのだ。
う〜む・・・

2012年7月13日金曜日

一覧表とリンク先 〜映画・読書・TV・エンタメ

今までのブログの本と映画のリンク先をまとめます


[日本語]
さよなら、愛しい人 by レイモンド・チャンドラー 訳:村上春樹
ロング・グッドバイ  by レイモンド・チャンドラー 訳:村上春樹
哲学者とオオカミ  by マーク・ローランズ 訳:今泉みね子
ある小さなズズメの記録  by クレア・キップス 訳:梨木香歩
精霊たちの家  by イサベル・アジェンデ  訳:木村榮一 その2
母の介護  by  坪内ミキ子
まちがいだらけの認知症ケア by  三好春樹
自分の始末 by  曾野綾子
健全なる肉体に狂気は宿る by  内田樹 春日武彦
出直しておいで! by  一色まこと
バナナフィッシュ by  吉田秋生
呼吸の本 by  加藤俊朗 谷川俊太郎
自分ですぐできる免疫革命 by  安保徹
身体の言い分 by  内田樹 池上六朗
ムーン・パレス by  ポール・オースター  訳:柴田元幸
ジョン・レノンを殺した凶気の調律 A=440Hz  by  レオナルド・G・ホロヴィッツ
黄色い雨  by  フリオ・リャマサーレス 訳:木村榮一
ラテンアメリカ十大小説  by 木村榮一
老いを生きる意味  by   浜田晋
いのちの輝き by  ロバート・C・フルフォート
君 気持ちを 大きく もとう by  毎田周一
不敵雑記 たしなみなし  by    佐藤愛子
ダイヤモンドダスト by 南木佳士
母の遺産 新聞小説  by 水村美苗
南部高速道路  by フリオ・コルタサル
風の影   by カルロス・ルイス・サフォン
シャンタラム by グレゴリー・ディヴィッド・ロバーツ
色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 by 村上春樹
エトルリアの微笑み by ホセ・ルイス・サムペドロ
蝶の舌   by  マヌエル・リバス
(株)貧困大国アメリカ  by 堤未果
ロルカ−スペインの魂  by 中丸明
女のいない男たち1・2 『ドライブ・マイ・カー』『イエスタデイ』by 村上春樹 
女のいない男たち3 『木野』  by 村上春樹
炭水化物が人類を滅ぼす  by 夏井睦
女のいない男たち4 『独立器官』 by 村上春樹
暮らしを旅する  by 中村好文
物語 スペインの歴史 海洋帝国の黄金時代  by 岩根圀和(くにかず)
蔵書の苦しみ by 岡崎武志 
サラミスの兵士たち  by  ハビエル・セルカス
やさしく読めるスペイン語の昔話  by  松下直弘
眼の病気 あなたの医学書 名医の言葉で病気を治す  
        by 安田典子 湯沢美都子 島崎潤(誠文堂新光社)
アルケミスト  by  パウロ・コレーリョ









[外国語]
The big sleep  by Raymond Chandler
Los fugitives  by Alejo Carpentier
Historia de una gaviota y del gato que le enseñó a volar    by Luis Sepúlveda
La casa de los espíritus  by Isabel allende
El Principíto     by Antoine de Saint-Exupéry
La lengua de las mariposas  by Manuel Rivas
Silence  by Alice Munro
post and beam  by Alice Munro










映画
セラフィーヌの庭 
三つ数えろ
木漏れ日の家で
somewhere
Lost Horizon
Random Harvest
グッド・ハーブ Las buenas hierbas
サラの鍵
ヘルプ  The help
コレラの時代の愛
セント・オブ・ウーマン
ミッドナイト・イン・パリ
きっとここが帰る場所 This must be the place
アレクサンドリア、 幸せパズル、 ビューティフル
八月の鯨、オリンダのリストランテ、オーケストラ
スモーク Smoke
汚れなき悪戯    Marcelino pan y vino
La casa de los espíritus (愛と精霊の家)
天地明察
マリーゴールドホテルで会いましょう The best exotic marigold hotel
ペーパーバード 幸せは翼にのって Pajaros de papel
ブルーノの幸せガイド Scialla!
リゴレット オペラの映画
ローマでアモーレ To Rome with love
メキシカン・スーツケース The Mexican Suitcase
蝶の舌   La lengua de las mariposas
風立ちぬ 
¡Ay, Carmela!    アイ・カルメーラ (歌姫カルメーラ)
アルタード・ステーツ(未知への挑戦) Altered states
(エハンさんお薦め)
ベイマックス 息子のお薦め









演劇
ふくすけ
もっと泣いてよフラッパー
プルートゥ
超都市・メトロポリス





演奏
ロン・カーター アメージング・トリオ
アンドラーシュ・シフ バルトークとバッハ





TV
スペック (spec)
最後から二番目の恋
家族のうた
ゴーイング・マイ・ホーム
高校入試
カラマーゾフの兄弟 
真夜中のパン屋さん
ガラスの家






2012年7月12日木曜日

頸椎から来る痛み、季節がねぇ〜

じめじめしていて健康な人でも何となく気分がすぐれない日々。

こんな時はお年寄りは大変だ。
オババのホームでは、今日の体操に参加していた方々は皆さま穏やかでとてもお元気そうだったが、多分調子の悪い人はお部屋から出て来ていないのだろう。

2週間程前からオババは右腕の痛みが増したらしく、ひどく痛がり、イライラしていて行動も粗雑で乱暴だ。カートをバーンと押してドアに当てたり、「少しでいいから、10回だけでいいからここを揉んで!!」と人前で私に向かってヒステリックに叫んだり、、、又その叫び方が芝居がかって見える程に大げさで、困ってしまう。

頸椎から来る右腕の神経痛だ。肩から指の先までしびれて、ちょっとした動作で飛び上がるほど痛い。私も何年も苦しんだのでその痛みを知っているから気の毒だが、ホームで紹介を受けて行った整形外科では今やっている治療以外に方法がないらしい。

リリカカプセルを飲んでいる。
病院では、「治りませんよ。薬で痛みを和らげるしかありません」と言われた。

私事だが、嘗てある病院の整形外科で「治りません」と見捨てられた私は近くの整骨院で3年がかりで治してもらった。「根気よく治療すれば治りますよ。今治しておかないと困るでしょ?」と。
T先生には感謝だ。自殺願望になるほど辛かったし、今でも季節の変わり目はしんどい。

本当に方法がないのだろうか?
ペインクリニックで神経ブロックをしてもらったらどうだろうか?
もう90歳だもの、恐れることはない!

しかし、よくよく考えてみるに、秋に病院へ行った時も、今みたいに大騒ぎしていたなあ〜  もしかしたら、単に『季節の変わり目』のせい?

どこまでが、普通の人の我慢の限界なのか?あのしたたかな我が儘ばーさんが相手だと尺度がずれて皆目検討がつかない。

もっとも90歳の老人に痛みの我慢はさせたくない・・・が本音だが。

2012年7月9日月曜日

『黄色い雨』 〜フリオ・リャマサーレス

"La lluvia amarilla"   by julio Llamazares
訳:木村栄一

こんな作品は初めてだ。
詩人が奏でる・・・語部?

読みながら、アリステア・マクラウドの『冬の犬』がちらちらした。
ここまで死を見つめると、もう言葉はいらない。

極限で蘇る記憶。
頭の中、心の中・・・沈黙。
過疎の村の中でたった一人の生き残りの老人が家を守りながら雌犬と一緒に死を見つめ迎える。

『私は自分の死を以下のように想像していた。つまり、突然血管の中に霧が立ちこめ、血液が一月の峠の泉のように凍りつく。すべてが終わると、私の霊魂が肉体から抜け出して、暖炉のそばの自分の席に降りてゆく。死というのはたぶんそれだけのことだとうと考えていた。』

すべての断片が一枚一枚の絵のように、キルトのように心に残る。
すごい作家だ。

"Historia de una gaviota y del gato que le enseñó a volar" 〜カモメに飛ぶ手ほどきをした猫の物語


この作品は、『カモメに飛ぶ手ほどきをした猫の物語』というタイトルがついている。
スペイン語の本だ。作者はルイス・セプルベダ (Luis Sepúlveda) というチリの作家で長い間色々な国を回り、現在ドイツ在住だ。。
平田渡さんがスペイン語の学習教材として原書のまま注釈をつけて編集して下さった。

サブタイトルに、"8歳から88歳までの若い人びと向きの小説"と書いてある。
今年の四月に同学社から刊行されたばかりだ。

『カモメに飛ぶことを教えた猫』というタイトルで日本語の翻訳本も随分前に出ているらしい。
ヨーロッパでは大ベストセラーだったそうだ。(何年頃だろうか?)

私にとっての初体験は、初級用ということもあり、とにかく速読できたことだ。辞書を使わなくてもどんどん読み進めることができた。今までは辞書を引いても分からないような作品ばかり読んでいたので、原書をこのように読めることはとても嬉しかった。

英語や日本語の本を読んでいるように、分からない箇所は飛ばして読んでも意味はきちんと付いて来てくれた。

挿絵が素晴らしく、もちろん文章もとても素敵だ。

カモメのケンガーはほんの一瞬のことで群れからはぐれてしまい、やっとの思いでヘドロの海から飛び立ったが、ハンブルグのソルバスというデブ猫のいるバルコニーに墜落し息絶えてしまう。この時の群れからはぐれる様子などは可愛らしくて笑ってしまうが、その後のことを考えると笑ってはいられない。

ソルバスはバケーションに行っている飼い主の一家の留守中で一人のんびり留守番だ。瀕死のカモメが空から落ちて来たのだから大変だ。そしてこのケンガーにあることを約束させられる。

ケンガーはソルバスの前で卵を産んで死んでしまうのだが、ソルバスはその卵を孵して育てて旅立たせてあげなければならなくなったのだ。 ソルバス自身も大変な生い立ちがあって今の飼い主のお陰で立派に育てられているので、一生懸命にカモメの赤ちゃんの世話をする。本当に必死で。

それでも、自分一人ではできないことだらけで、まわりの色々な仲間たちに助けてもらう。もちろん人間にも。
猫は、本当は人間の言葉をしゃべることができるのだそうだ。内緒だが・・・

カモメの子アフォルトゥナーダは最後には見事に飛び立って行くのだが、その間の悪戦苦闘が実に楽しい。多分劇場で芝居がかってやったら面白い作品になるだろう。

約束を必死で守るソルバスの温かい姿はとても貴重だ。いつの世でも、どこの国でもみんなの心の中にもそんな気持ちがあって欲しいものだ・・・
良い作品はいつになっても8歳から88歳までの若い人々を心から楽しませてくれ、病んだ心を癒やしてくれる。(何故88歳までなのか・・・?)

2012年7月7日土曜日

酵素温浴 〜3回目

新潟の酵素温浴、ヘリオトロープへ行って来た、今回で3回目。

Kzさんがエネルギー切れしていて、酵素が恋しくなったのと、私が薬の副作用で又手足の筋肉に来てしまい、溜まった物がなかなか体外に出てくれないことなどで、丁度良い時期に来ていたためである。

前回の二回は大雪で、1回目などは帰りに高速が通行止めになり、雪に埋もれた下の道を(多分国道だと思うが)トコトコ何時間もかけて帰ったし、2回目はそれに懲りて新幹線で行ってレンタカーをしたにもかかわらず、Kzさんが地元の道路で珍しいアイシーレーンに捕まり、Kzさんは慣れているのだけれど、地元の人がむしろ慣れていないせいで車が路肩に取っ捕まったり、引っくり返ったり、橋の上で動けなくなったりで、交通マヒが生じ散々な目にあった。

今回は夏だから大丈夫と車で日帰りで行って来たが、帰りが "大雨警報"!
まるで海の中を車で泳いでいるみたいな凄まじい雨の中を走り続けて11時過ぎに軽井沢の家に帰宅に至った。

新潟方面には私たちと相性の悪い何かがあるのかな? それとも大歓迎?

久しぶりに施術師のTさんにお会いし、又元気をいただいて戻って来た。
体調は一回目の時の滅茶苦茶な状況に比べたら、ずっと良くなっているそうだ。松下先生と同じことをおっしゃる。自分でも本当にそう思う。

だって頭痛がないことがない自分だったのに時々になったし、毎日下痢をしなくなったし、天ぷらを食べても少しなら胃もたれしなくなったし、何をしてもとれなかった肩凝りも体操すれば少し楽になるし、朝死ぬ思いをしなくても目が覚めて起きることができるし・・・と挙げたらきりがない。

相変わらずの体質だが、自覚症状としては大変革!!
別人の如しです。

苦労は人生の肥やし、苦労が多い人ほど人間的にもっと高い人間になることを求めているのだから喜んで苦労難題に取り組みなさい、と言われた。

最近の私は確かに肝が座って来て、何か起きる度に「又か!・・どうぞおいでなさいまし」と難題をお迎えできるようになってきたから少し進歩(?)したかしら?

と、大雨警報にも懲りず、又半年くらいしたら酵素さまに抱かれに伺おうと二人で話しながら戻りました。

どうしてこんなに気持ちが良いのでしょう!? 
今のようなテンションの連続の二人に一番必要なのはリラックスできる時間を持つことなのかもしれません。そしてそれに感謝できる気持ちをいつも持っていることも。

[追記]
今、又ものすごい勢いで雨が降り始めた。前の小道が川になっている。

いつも不思議に思うのだが、さっきまで気持ち良さそうに遊んでいたあんなにたくさんの小鳥たちは一体どこへ行ってしまったのだろう?どこで雨宿りしているのだろう?

2012年7月3日火曜日

人のいない家

長野の実家の夢をチラチラ続けて見た。
家に呼ばれているような気がして、何かあったのか気になって、行ってきた。

一人暮らしの母が東京のホームに入ってしまったから今は誰も住んでいない。電気も水道ガスも止まっているから、長居はできないし、掃除もできない。

夢で見た家は埃と蜘蛛の巣で廃墟のようだったが、今日の家は何だか今でも母が几帳面に暮らしているみたいな存在感があった。父の魂が守ってくれているのだろうか?
突き当たりの壁にかかっている大きな父の写真が嬉しそうだった。思わず声をかけてしまった、「お父さん、お久しぶりっす!」

できれば、電気も水道も通してもらって、掃除をしてあげたい気持ちにかられた。

人気のない家はネズミが出て来そうで嫌だったが、家が喜んでくれているのか、意外にも暖かみがあって、オババが入院していた時の薄暗い冬の不気味さよりもずっと気が楽だった。
実際すごいボロ家なのだが、母の実家は材木屋さんだったので、おじさんが調達してくれた材木の質が良くて、みかけよりもがっしりしているようだ。
多分夏の割には涼しくて、隣の家がなくなって駐車場になっていたので、光が以前よりも入って明るかったからかもしれない。

母の洋服をチェックして、お気に入りだったものや良いものは特大の丈夫な袋に詰め込んだ。
確か近所のお米屋さんが宅急便を扱っていたはずなので、大きな荷物を抱えて持って行ったら、おじさんが入れ歯をはずしたまま出てきて、
「今日これから病院へ行くところだから宅急便出せないんだよ」とふがふが言っている。
「おじさん、どこか近い所に宅急便できるところない?」と聞いても、全く要領を得ない。
隣の店の人に聞いたら、「セブンイレブンだね」と言われ、
「歩いて行くのかい?・・・(かなりな間があった)・・あなた、元気そうだから行ってらっしゃい!」と無責任にも言われた。

かなり不安だったけれど、行くしかないので、えっちらおっちら行ったら、遠い遠い。あの言葉の間は確かに行くように薦めるべきか迷っていたに違いない。
あんな大きな荷物を持って雨の中を傘もささずに歩いて行ける距離じゃありませんよ〜だ!

というわけで、今日の運動は十分したので、戸締まりをして市役所にかけこんだ。
どうしてって、トイレに行きたくて死にそうだったのだから。

荷物を送ってお昼を食べたら急に元気が出てきて、善光寺へ行くことにした。
どしゃぶりの雨の中、仁王さま、こんにちわ!

だって今年まだ初詣してないし、おみくじは今年の分引いてないから・・・。
大勧進のおみくじは私の年中行事で生まれて此の方日本に居ない時以外はいつも引いていたのだ。どうしても、引きたい。

そして、信じられない程よく当たる!!
だって、父が亡くなった年には凶だったもの。

今日は久々の『大吉』、本当に久しぶり。
自分が正しいと思うことを信念を持って堂々とやり貫きなさい、何もかもうまく行きます・・・けれど、「必ず公道を行きなさい」。道を外れてはいけません。

今までは「じっと耐えて信じて時を待ちなさい、必ず開けます」「今は種まきの時です、必ず実りの時が来るから〜」だったが、やっとお許しが出た。自分から動いても良いらしい。

今年は自分の意志で思う通りに動こう。(もう半年以上過ぎてしまったから次のおみくじを引く時までだな?)判断力の試される時かもしれない。

いざ、行動開始!


2012年7月2日月曜日

夫の一族 〜長寿の家系

この週末は法事だった。
昨年80歳で亡くなった夫の父の末の妹、つまり私たちの叔母さんの一周忌だ。

叔母さんのお嬢さんが兄妹だけでやるということで、今回は甥である長男の嫁の仕事はなかったのだが、みんなご老体で直接法事に行くのでは大変ということで義父が前日妹弟夫婦をホテルに招待した。そこでのお手伝いは長男の嫁の仕事で、軽井沢にやってきた。

もうすぐ90歳になる義父は8人兄妹だったらしい。
今惣領をしているが、上に二人姉がいたそうで、早くに亡くなったらしい。
それから下から二番目の弟を水死事故で亡くしているそうだ。

よって今回は存命中の、義父の下の妹二人と一周忌の妹の下の弟をそれぞれカップルで招した。総勢8人。

ここで驚いたのが6人が80歳以上で、皆さま異様に元気だということだった。Kzさんの一族は長寿の家系なのかもしれない。
最近介護の話で盛り上がる友人たちの間で、一定の年齢を超えると、その人は多分強力遺伝子を持っていて、とても元気で長生きするという傾向があると話していたところだった。(特に生き残った大正生まれはすごい!らしい)

義父は実家の母の一つ下、母はカート無しではおぼつかない足取りだが、義父は現役会長さま。しかも全部自分の歯で、お肌つやつやで杖なしでスタスタ歩いている。みんなに60代に見えると言われるらしい(やばい、私たちと同年代ってことかい?)

義母も83歳なのに当然めちゃくちゃ若い。しかも自転車スイスイで好奇心旺盛の働き者、おまけに美人だ。

ところが、叔母さまたちも違わず、若くてエネルギッシュでびっくりした。
こうして並ぶと、あきれる程明るくお元気。
俳句を作りながら、畑を耕して(横浜から長野のご主人のご実家の畑に来る)頭と身体を両方目一杯使っていらっしゃる。もちろん時代にばっちり付いて行っている。

晶石で作ったサイマのお風呂でリフレッシュ!ピッカピッカのお地蔵さまみたいになって皆さまニコニコ顔でパワーアップしていた。私は完全に負けている。

お食事も美味しい美味しいと完食!
よくしゃべるし笑うし・・・ご夫婦とても仲良しだ。

皆さまの若さの秘訣はそんなところにあるのだろう。

Kzさんも一族の血を引いて長生きするだろうか?それとも苦労が多すぎて、一定の年齢に行かない方の劣性遺伝子だろうか?

いずれにせよ、みんな仲良く明るく楽しく暮らして行ってほしいものだ。