2014年12月7日日曜日

『昨日のカレー、明日のパン』 〜木皿泉の、ゆるやかな時間の流れ、のほほんとした世界

BSプレミアムの日曜日10時台はいつも楽しみな作品に出逢う。

この作品、一回目を観た時、「いいなあ、この時間の流れ方。なんか懐かしい〜〜、脚本誰?」と調べたら何と『木皿泉』とあった。「がーーん!!」実は私は彼らの作品が大好きなのだ。

その衝撃は、『すいか』で始まった!
小林聡美は当然だが、ともさかりえの演じる絆ちゃんの変人ぶりや浅丘ルリ子の教授の雰囲気、そして『めぞん一刻』の管理人さんを連想させる市川実日子の清楚な穏やかぶりが妙に心に染みるのだ。

あの懐かしい、水色のバックに大きくのっしのっし歩くツナヨシ(?白い三毛猫でとても大事な出演者の一人、将軍の名前だったような気がするが・・・)とひまわりかへちまの風景が小さく貼付けられて白文字で『すいか』って入っている壁紙を随分長い間PCで使っていたくらいだから、余程気に入ったのだろう。
心が荒れたら、あの壁紙を眺めると不思議と気持ちが優しくなったものだ。

今調べたら、2003年の作品だ。11年も前のことなのだ・・・。

話を現在に戻そう。
この『昨日のカレーと、〜』はやはりみんな心になにか抱えている、ちょっと社会に馴染めない人々が、実にのほほんと気負わずに時間を乗り越えていく作品だ。



早くに、大好きだった夫のカズキ君(星野源)を亡くしてしまったテツコさん(仲里依砂)は、自分は幸せになってはいけないと思いながら静かに義父のギフさん(鹿賀丈史)と暮らしているのだが、その静かブリが温かくてなかなか良いのだ。

彼氏の岩井さん(溝口淳平)の度を超した善人ぶり(本当に善い人!)や、お隣のミムラ演じる笑えなくなった元キャビンアテンダントのムムムちゃんと、それを取り巻く二人の同級生男子の3人組が社会に馴染めなくて惣菜屋を始めるのだが、少しずつ元気だった自分を取り戻して、新しい世界に目を向けられるようになる様子なんかが、重くなく、さらりと思いやりたっぷりに描かれている。再生の物語だ。

わざとらしいのに、全然いやみのない世界。
ミムラなんか、ブスっぽくて雰囲気抜群で初め誰か分からなかった。福士誠治のサカイ君もしかり。みんななかなか曲者で、多分出演者は普段と違う自分を、とても打ち込んで乗りに乗って演じていたのではないだろうか?

日常の出来事の中に織り込まれた、テツコさんの心の中の解放されて行く姿が見事に描かれた救い多き作品だ。
だって死をテーマにしているのに、それはそれは爽やかで、心が温まって、こんな風に気負わずに生きて行きたいな、と感じさせるのだ。

バックに流れるプリプリの『M』は又懐かしさを誘い、心にしみ込む効果がすごいし、画面に出て来る料理は実に美味しそうで、又温かさで一杯だ。
美味しい料理は人を和ませる。

脇を固めた癖多き役者の方々、とても素敵でしたよ。
久しぶりに平和な時間を過ごせました。

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