2011年7月20日水曜日

さようなら、原田芳雄さん

昔、まだ私が若い頃、『二丁目3番地』というテレビドラマが大ヒットしていた。
シャキッと強い浅丘ルリ子と、頼りない強くない男の石坂浩二の演ずるへいちゃんのラブコメディーというか、ファミリードラマというか・・・とにかくとても素敵な番組だった。
赤い鳥の澄んだ声が歌う、『目覚めた時には~いつでも晴ーれてる♪』というテーマ曲がいつまでも聞こえる。そして、二人の言葉合戦(多分脚本が面白かったのだろう)が巧みでとても面白かった。

その後、好評だった2丁目に続いて、『3丁目4番地』が始まった。
こんどはビリー・バンバンの『過ぎた日のほほえ~みは、みんなきみ~にあげる♪』・・・曲は2丁目の方が好きだったが、これもなかなか良かった。
私は2丁目の頼りないヘイちゃんのファンだったが、そこに強力なライバルが出現した。

下宿人のロクさんだ。
いつもどてらを着ていて、踏み台から天井裏に顔だけ出して、置いてあるレールの上の電車を動かしている。鉄道?山道みたいな気もするが、とにかく列車マニアみたいな世捨て人的イメージの、スナフキンみたいな奴だった。ただし、たまらないスケールの大きさと魅力のある人だった。

この人がドカン!と来た。
この役者さんだれ?初めて見る顔だった。 
原田芳雄。 
何て地味な名前、俳優じゃなくてその辺の人みたいね。
これが彼との出会い(一方的だけど)だった。

私はアウトロー的な、泥臭くてどこそこ冷たいが本当はめちゃくちゃあったかい、欲がなくて、どこか達観していて、でもハンサム・・・自分があって、地位もお金もないのに堂々としている・・・そんな彼に夢中になった。多分二十歳の頃ではないかなあ?

当時の私は映画やテレビは好きだったが、俳優さんに夢中になるタイプではなかった。
今でもサッカーが大好きだが、おっかけするタイプではないし、特定の選手のファンになるタイプでもない。
しかし、二十歳の頃の私は彼にはまった。後にも先にも、そういう気に入り方をしたのは彼だけだったような気がする。
もしかすると、若い頃の彼の顔が好きだったのかもしれない。(ちょっこし、若い頃の家のダンナに似ているようないないような・・・)

それからある時期まで彼のテレビは全部観たし、邦画はあまり好きではなかったが、映画も観た。
『赤い鳥、逃げた』
柳生十兵衛をやった時の蝉を黙らせたシーンとか、すごく好きだった。

けれど、原点は3丁目~のロクさんだ。
あそこに私の好きな男性の姿が凝縮されていたのかもしれない。

次第に彼の役柄も変わって行き・・・私の好きだったロクさんの姿はあまり彼の中には見えなくなり、むしろ個性の強い、きつい役どころの役者さんになっていった。緒形拳さんみたいに、やはり邦画や大きなドラマの世界ではなくてはならない存在だった。

彼が亡くなったのは、マジ、ショックだった。
71歳とは知らず、同世代に感じていたからだ。
60代真ん中辺りと思っていた。

私の好きだったロクさん風の役はそれ以後の彼にはなかったが、私の原田芳雄は、あのロクさんとイコールであり、できれば、今の歳であんな穏やかな何もない、けれど格好いいおじいさんの役をもう一度してもらいたかったような気がする。
そうしたら、またドカーーンと来てしまっただろう。

私も、お迎えの準備に備えて、悔いのない人生を心がけよう。

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