2013年1月19日土曜日

フリオ・コルタサル『南部高速道路』 〜大雪の日の高速にご用心!

2013年の幕開けは色々大変です。

池澤夏樹さんが編集した世界文学全集の短編コレクションに、南北アメリカ、アジア、アフリカの傑作20編というのがある。



とても面白い短編集で、本当に秀作ばかりが載っている。
その本の第一作目が、このブログのタイトルになっている、フリオ・コルタサルの『南部高速道路』

原作は Antología "Los mejores relatos latinoamericanos" という錚々たる作家によるラテンアメリカの傑作短編集にも載っている。


タイトルは、"La autobista del sur"  作者は、Julio Cortazar

高速道路の渋滞から始まって、運転している人々は高速の中で少しだけ進むのだがほとんど足止めをくう。
その足止めが、延々と続き、うだるような真夏から、雪が降る季節にまで及ぶ。信じられない長さの足止めなのだが、不思議なことに人々は高速の中でコミュニティーを作り始め、一種の社会ができあがっていく。
みんなは工夫し、助け合い、時には自分勝手な人々やエゴが出たり・・・
その人間模様が面白い。

数年前にパトリシア先生のクラスでやった、映画『バスを待ちながら』("Lista de espero")というキューバ舞台の素敵な作品にもスケールは小さいけれどなかなか来ないバスを待ちながら共通した世界が出来上がっていた。
ラテンアメリカ系の作品にはそう言う現実と夢の堺目がないような奇妙な世界がよく描かれる。

ところが、先日の大雪で私はまさにこの『南部高速道路』の世界の体験をした。

当日新潟から帰る車の中で、(我が愛車ニナちゃんははまだ新車で雪に備えた四駆のスタッドレスで雪道なんかなんのそのなのだが・・・)途中で高速が閉鎖になり、「ここから外へ出て下さい〜」という指示のもと、鶴ヶ島のICで下ろされてしまったのだ。
そこから先ですでに高速の中でスタックしていた車はどうなったのだろう?

鶴ヶ島なんて降りたことも行ったこともないので、方向も分からない上、車は全く先に進まない。

結局全行程8時間かけて無事家にたどり着いたのだが、その間、ずっと私はこの作品のことを考えていた。
何故かと言うと、家のX3は全く問題なく雪道でも山道でも進めるにもかかわらず、身動きが全く取れない状態への苛立ち、路肩を通って追い越すこともできないもどかしさ、道を塞ぐスリップした車、、、雪が降っただけでこんな閉ざされた世界になるのか!と。

世界が変わって見える、驚き。

高速を降りた後も、知らない土地をカーナビ頼りにノロノロ進みながら、普通の街の中なのに雪山の中で遭難したような心細さに覆われ、全く違って見える先に進めない道路は、「雪がやむまでその辺でお茶でもしていたら?」などという気持ちにさせてくれない恐怖心と、永遠に家に着かないのではないだろうか?という不安感に襲われる不思議な世界があった。

作品を読んでいる時は、むしろ退屈だったのに、こんな体験中に思い出させる、この作品のパワーに・・・文学のすごさに驚いた新年早々の私でした。




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