スペイン語のお友だちにお借りしたDVD、やっと観る時間がとれました。
劇場に行こうと思っていたけれど、行きそびれていた作品です。
"Pajaros de papel"
スペインの内戦からフランコの軍事政権下のマドリッドを誇り高く生き抜いた芸人の姿を描く作品だ。
ホルヘとミゲル少年の姿が、ロベルト・ベニーニの『ライフ・イズ・ビューティフル』に重なって困った。
フランコ、ナチス、ピノチェト・・・スペイン語の映画には軍事政権下での不条理を描いた作品が多い。
内戦で最愛の妻と息子を失ったcómico(コメディアン)ホルヘ(イマノル・アリアス)が、感情を失ってしまった状態から、相方のエンリケの支えとともに、いくら突き放しても慕ってくる戦争孤児のミゲルに芸を仕込みながら少しずつ心を取り戻して行く様子が心暖まる。
ホルヘの家族への愛に満ちたシーンは本当に愛に満ちていて素敵だ。父親ってこういうものなんだ〜と心底思わせる温かさに溢れている。
イタリア映画でもこういう父親の姿がよく描かれるが、ものすごく子供を大切にする。日本のお父さんって少し距離があるような気がするのだが・・・。
ファミリーのあり方って国ごとに違って面白い。
死を恐れていないホルヘは、心を隠さずに自己主張をするので軍に目をつけられ、結局は誤解のまま殺されてしまうのだが、この不条理さは、今の時代でも戦争とは別の心の戦争で起きていることなのだと思ってしまった。
けれど、彼は堂々と自分のまま毅然として生きているので、後味が悪くない。命を落としても心がスッとしたのは私だけだろうか?
戦争のない現在の日本でも、自由に発言でき、表現できるわれわれでさえも、人生は筋の通ることばかりではないし、自分の思いを通そうとすれば必ず障害が生じる・・・と現存する独裁者の姿がチラチラ浮かんで来た。
この映画はテーマとは別に、舞台の芸人たちの演技がとても素晴らしかった。それだけ観ていてもショーとして成り立つようなパーフォーマンスの見事さだった。
音楽、しぐさ、明るさ、芸人根性・・・『蝶の舌』のサックスの演奏のシーンなども思い出す。戦争下での笑いの大切さ、人の心に潤いを与えてくれる芸人たちの役割の大切さが伝わってきた。
最後に、エンリケとともにアルゼンチンに亡命したミゲルが老人になり、立派な芸人になった舞台のシーンで、彼がすっかりブエノスアイレスに馴染んでアルゼンチンの人になったことを、彼の話し方から感じた時は嬉しかった。
長年スペイン語を続けて来て、それがアルゼンチンのアクセントでしゃべっていることがスピーチので出しだけでとてもよく分かったからだ。(スペインで生まれたミゲルが、亡命後スペインに戻ることなくアルゼンチンで生き抜いたことが感じられた)
映画には小道具がたくさんある。
調度品や背景だけでなく、話し言葉のアクセントだけでかれが歩んで来た人生を表現してしまう瞬間は楽しかった。
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