2014年7月9日水曜日

認知症の特徴 〜変化を嫌う

うちのおばあさんの口癖は、「早く死にたい」と「こんなところに居るばっかりで・・・」だ。

買い物が大好きな母は、多分外に出て、自由に自分の行きたい店をのぞいて、好きなものを買って・・・と思っているのだろうが、実際はあまり動けない。

3年前に軽井沢に連れて来た時には、オババの反抗心にめった打ちにされ、死ぬ程疲れた。重い重い、心をえぐられるような悲しい疲れだった。二度と「連れて外泊はしない」と心に誓った。

今回は兄夫婦と協力し合って、最近落ち着いているので、少し外に出してあげようと、軽井沢行きを企てた。

やれやれ・・・結果は散々だった。
散々だったが、朝起きると本人はけろりとして、まんざら気分が悪そうでもないのが、救われた。



認知症はルーティーンを乱されるのを嫌う。
それが、寝る場所は違うし、ベッドの位置も違う。部屋を出てもホームの廊下とどこか違う。「私の部屋はどこ?」「ここはどこ?」「どうして私はこんな所に居なければいけないの?」同じ質問を3分おきに繰り返す。
多分その疑問で頭の中が一杯になってしまうからだと思うのだが・・・。

自分が外界に出たいと言っていたことは覚えてはいない。
閉じ込められている閉塞感と外へ出たい気持ちのバランスが微妙で、外に出た途端にその緊張感で感覚が麻痺し、それが恐れに変わってしまうのだ。
体中で、自分を守ろうとして、イライラし、怒鳴り、とても強く人に当たる。

しかし、4人の身内に囲まれてなだめられると少し安心して、大人しくなる。
ところが、みんながおのおのにおしゃべりを始めると、自分が会話に加われない、内容について行けない悔しさで、又イライラが始まる。
そしてトイレに行きたがったり、大声を出したりする。

夜中の2時間おきのトイレは、お漏らしをしたくない緊張感からか、落ち着かなくて起きてしまうのか、わざと世話をかけたいからが分からないが、介護の人を休ませてくれない。

ハルニレテラスをシルバーカーを押しながら自由に歩き出すと、目の色が変わった。一軒一軒のぞいては、高いと怒っている。
その時間はまんざらでもない感じだった。

兄夫婦も私たちも、何だかくたくたに疲れた。いくら認知症でもみんな母のことが好きなのだ。それでもあの気性の激しさと、我が儘にはげっそりする。
けれど、3年前と違って、四人の人間に分散できたお陰で、かなり救われた。

本人は同じ部屋で同じトイレの位置で、同じ時間にお食事を食べて、同じスタッフに囲まれて・・・が安心するのだろうが、もしかしたら何か脳に刺激が行ったかもしれない。

ホテルに泊まって好きな時間にお風呂に入って、帰りには疲れて歩けなくなって、怒って、でも美味しい食事を食べて、みんなに声をかけられて、一人ではなく、家族と一緒に寝て・・・翌日は別荘で、みんなでのんびりだらだら過ごして、私が作ったお食事を食べて、本当に家族水入らずに時間を過ごした。

それはただ私たちが満足しただけだったのかわからないが、相手にとっては迷惑千万だったかもしれないが、ちょっと努力して、実験をしてみたということだろう。

何か記憶に残ってくれたら嬉しい。
喜びと、怒りのどちらが多かったのかわからないが、それでも一度やってみるのは無駄ではないと思うのだ。

もし、認知が悪化したら、もうそういうことはやめて、静かに見守ってあげよう。

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