2023年12月21日木曜日

『すべて忘れてしまうから』と旅行記

 ちょっと気になった『すべて忘れてしまうから』という深夜の番組。こんな時間に阿部寛さんが主演のエッセイ風のドラマなので、つい観てしまった。


作家である阿部さん、書き溜めておいたメモ的な原稿を読みながら「こんなことがあったんだ」とか「あの時こんな気持ちだったんだ」とかを思い出しながら連載のエッセイ(?)のネタにしているのだが、その時「どうせすべて忘れてしまうのだから、こんなに些細なことでも書き留めておいて良かった」というような台詞があった。これがビーンと私にヒットした。

この時、私は23年前にパリに一人旅をした時の旅行記をパソコンに入力していた。23年前に当時使っていたパソコンはフロッピーに保存するしか方法がなかった。仕方ないので保険でプリントアウトしておいたのだ。うちでは日本上陸では一番古いかもしれないMacbookを使っていた。Macのノートパソコンが発売になったので予約して日本で数台目に輸入されたものだった。当時はまだwindowsとの互換性はなかった。

何かの映画でシルベスター・スタローンだったか、アーノルド・シュワルツネッカーだったかが最新のラップトップを駆使して活躍している場面があったのだが、その時つかわれていたのがうちのと同じモデルだったので、「おお!」と思ったのを覚えている。話は逸れたが、このMacはキーボードがとても自分に合っていて、入力が実にしやすかった。今でもあの感触が懐かしくなる。

それに入れた原稿がいくつかフロッピーに保存しておいたのだが、windowsでは開けなくなり、他のMacでも駄目で、どんな字体に変換しても文字化けするばかり・・・フロッピーがなくなりUSBになり・・・・などとしているうちにそれから何台目かになる今のパソコンには存在していないので急に残しておきたくなり、遠い昔にプリントアウトしておいた原稿が役に立っているというわけだ。

これがすべて忘れてしまっている私の記憶というものを驚くほど認識させてしまったのだ。パリの旅行記はすごいパワーを持って旅行を再現してくれた。全く覚えていない事実も薄ぼんやりと蘇ってきて、さらに当時旅をしている自分が記憶の中に戻ってくる。歩いている街、店、店員さんの表情・・書き写しながら当時の記憶が生き生きと蘇ってくる。

原稿用紙に残しておいたものもたくさんあるので、時間を見つけては入力しておこうと思う。これは衰えていく自分の記憶の宝庫なのだ。

このドラマはとても素敵だ。阿部さんは大好きな役者さんだからだけでなく、何気ない作家の日常の中の出来事が描かれているのだが、Charaさんのお店に集まる人々の人生や人間関係がポツポツと呟くように入ってくる。音楽が効果を高め、その使い方がなかなかいい。クドカンのふくちゃんとチャラさんの醸し出す雰囲気がいい。主人公の作家さんが何気なくて、まあいいか〜という感じになんでも受け入れてしまい、そうこうしているうちにいつの間にか周りの世界が動いていく。

その懐かしいような日常の中に存在していたい気持ちにさせるドラマに感謝。寄り道しないで旅行記の続きを入力しよう。



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