2023年10月18日水曜日

なんうま? 〜何曜日に生まれたの?

何曜日に生まれたの?という台詞を目にした時、村上春樹の『街とその不確かな壁』を思い出した。 赴任先の図書館で学校へ行かない風変わりな少年が登場するのだけれど、この子は興味を持った人に「何曜日に生まれたの?」と質問するシーンがいくつか出てくる。この子はのちにとても大切な役割を演じるのだけれど、この時私はすぐに自分は何曜日に生まれたのか調べた。そしてそれは月曜日だった。

久しぶりの野島伸司さんの作品なので始まる前からワクワクしていた。そして全くワクワク感を裏切らなかった。


ホリーズの'Bus Stop' が流れた時、もうすでにガツーンと来て血が騒いだ。「そうかこの曲を使うのか・・」この曲を懐かしいと思う世代向きになってしまうのか?それとも若い人にはかえって新鮮味があるのか私にはわからなかったが、とにかくいい!! 傘が近付いてくるイントロも最高!この傘を差し出す人はだれなのだろうか?「どうぞ世代を超えて受けますように」と心ひそかに祈った。

私は作り上げられたドラマが好きだ。いかにも作り物風で、舞台のように緊張感があって、演出の面白みが溢れる。それが現実離れしていようが、絶対あり得ないよ、などという感じでもOKだ。むしろその方が心に響く。現実のコピーではつまらないのだ。別の世界に連れて行ってくれないから。この作品はそういう意味でも、私を作品の中に引き込み、とてもうまく作られたドラマだった。隙がなく、気持ちよかった。

野島さんは最後にとんでもないところに引っ張って行ってガクンとくる作品のイメージがあるので、最後までいつ突き落とされるのかとハラハラしていたのだけれど、不安を裏切ってとても後味が良かった。心が温かく顔が穏やかになった。

最近は一回目を観て、これダメだ〜と2度と観ないようなドラマが多い。視聴率稼ぎとか、とにかく観たい気持ちを引っ張るためだけに作られたものとか、人気のある人さえ使っていれば的なものとか・・・しかしこの作品は配役もプロットもとても良かった。丁寧に作られていて、役者さんたちも生き生きと演じていて、とても素敵なワールドを作り上げていた。この世界に浸っていたい〜という心地よさだった。

若い頃にいつの間にか気づかないうちに人を傷つけていることがある。あるいは自分がズタズタに傷ついている。あの時の何気ないあの言葉、あの事件・・・友だちだったり、親だったり、どこかのおばさんだったり、噂だったり。そしてあの頃のそういう傷は心に響き、後を引く。多感な大事な時期をそのために台無しにしてしまった人が、少しの間でも取り戻せるひとときをプレゼントしてくれたのだろう。

飯豊まりえさんはとても好きな女優さんだ。彼女ならではの雰囲気が素敵で、他の女優さんだとこの感じは出ないのでは?と思わせる空気がある。溝端淳平くんの公文さんも良かった。彼の今までの役の中で一番良かったのではないだろうか?学生時代の5人の仲間も編集長もお父さんもみんな良かった。リリ子さんの片山友希さんはこれからが大いに楽しみな女優さんだ。

多分出演者は演じていてこの空気がとても心地よくて楽しかったのではないだろうか?そんな空気が私に伝わってくる。久しぶりに心にのこるもう少し浸っていたい世界を見ることができて、映画好き、ドラマ好きの私はとても幸せだった。青春はいい!!


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