2011年6月9日木曜日

弱音を吐こう介護日誌⑮ 〜「認知症だからしようがない」おまじない

オババの横暴さに愚痴をこぼした私を慰めてくださったJさんに、
「この人は認知症なんだから何を言ってもしようがない、って思って投げられたボールは横においておきなさい」と言われました。
昨日はどうにかそれで乗り切りました。

今日は、行ったなり、絣のズボン病が再発。
私にメモを持って来て、「紺色のズボンがありました、取りにきてください」との文字を見せました。
これお母さんの字に似ているけれど、誰かがメモして、私が来たらこう言ってくださいと言われたの?
「そうじゃなくて、そう言われたから忘れないように書いておいたの」だから一緒に行ってくれときかない。
「お母さん、このズボンは存在していないズボンなの。だからホームの人に迷惑だよ。一緒に騒ぎたくないよ」
オババはムッとしてどうしても納得しないので、一緒にH長さんの所へ行って事情を説明してきた。どうも朝からあの紙切れを持ってうろうろ騒いでいたらしい。H長さんは洗濯室へ行ってもう一度チェックしてくれ、
「やはりありませんよ」とお部屋に伝えに来てくれた。
昨日の段階でもう解決と思ったら、とんでもない、何万回でも復活する。
「あれは、すごく大事な思い出の品で・・・どうしても見つけてもらいたい」と懇願するので胃が痛くなる。
しかも、自分で『ありました』というメモまで作成するのは、もう異常といか言い様がない。

その後、健常者の足で歩いて10分位の所にある西友に買い物に行った。尿漏れパッドが欲しいというので付き合ったのだが、行く間中、自分は外に出られない、牢獄だと言いっ放し。今はどうだと言うのだ?出ているではないか!!先日兄が、その前が私、週二回は出ているというのに・・・何と言う贅沢かつ我儘。

その道のりがオババの足では遠いのは分かる。けれどあえて足のトレーニングの為にカートを引いて出かけた。兄とのお出かけの時には車椅子を使うらしい、どうして座れないのだと何度も繰り返して質問する。私は
「歩くの嫌だったら、行くのやめたら?私はかまわないよ。すぐ近くの散歩なんだから、私は車椅子は使わない」
「じゃあ、帰る」
「そうしなさい」(認知症だからしようがない)

そう言いながらも行きたいので我慢して、「帰りは車椅子を取りに行け」と言う。
知らん顔して、歩いたが、大した距離ではない。本人にとっても、実際ゆっくり行けばどうってことない。健常者で10分よりも、私だと普通に歩いても5~6分だ。
それでも20分ぐらいかけて、ゆっくり休みながら歩く。
大げさに息が切れる振りをする。もう歩けない、お兄ちゃんだったら車椅子に乗せてくれるのに、と言いっぱなし。
「これじゃあ、とても長野へは行けないね」
「・・・」


到着すれば別人!店内では目の色が変わって、歩くことに何の文句もない。歩くのが嫌だということすら忘れている。
「何だ、糞ババア!」(認知症だからしようがない)
エスカレーターを生まれて初めて見た、と言った。
ついこの間まで長野の東急をすいすい乗っていたのに恐くて乗れない。のぼりは身体が覚えていて一歩踏み出したら難なくこなしたが、下りがひどかった。多分一歩踏み出せば身体が自然に運んでくれるのだろうが、恐怖が先に出てしり込みした。
多分誰かに助けてもらって親切にしてもらいたかったのだろう。手を差し出す私を無視したので、私は荷物を置いたまま一人で下に下りていくはめになった。すぐに後ろの人の言うことは聞いて降りてきた。
嫌な、人間!糞ババア!!(認知症だからしようがない)
私は又二階へ戻り、買った物と手押し車を持って降りてきた・・・やれやれ、いつものことか。

他人がいると、こういう行動をいつもする。
電車から降りるときもいつも私の差し出す手を無視して、私の手を振り払っておいて 「この人は親を助けてもくれないのよ」と人に向かって言うのだ。そして誰かが必ず手を貸す、その快感を求めているのだろう。
当時の私は悔しくて涙が出た。 こんな母親っているのだろうか?
認知症の前からだ。

認知症って本性が出るのかな?

帰りは、もう目的を果たしたのだから、当然のことながら文句の連続。お兄ちゃんだったら、お兄ちゃんだったら・・・・
「うるせえ、糞ババ~~!!」こう怒鳴りたかった。
しかし、あまりのしつこさに頭痛がしてきたので、ついに言ってしまった。

「一緒についてもらってお買い物に出られるだけでもいいんじゃないの?ほかにこんな人いないよ。週二回も出ていて、閉じ込められっぱなしはないでしょ?ばちがあたるよ。 長野に居た時と比べてみて。毎日来ている人の身になってよ。文句ばかり言わないで少しは感謝したら?」と言ってしまったのが、運のつき!
「あんた親に恩を売るつもりか、子供なんだからこんなこと当たり前じゃないか、そういう恩着せがましいことを言うんなら、もう二度と来るな。あんたの世話になんか死んでもなりたくない。こんな事を言われるなんて、二度と許さない、呪い殺してやる!!!」と憎しみをこめて逆上した。
正直恐かった。憎しみは良くない。

私は言葉を失いつつ、無感情。
「そうだね、そこまでひねくれちゃね、、、私はもう言うことないよ。これだけやっていても、文句言われるばかりで全然報われないんだものね。 これからは何もかも、優しい大好きなおにいちゃんにやってもらえばいいよ。わかった私はもう二度と来ないよ」

この時はもう『認知症なんだからしようがない』おまじないは利かなかった。

ホームに戻って、「お母さん、私には来て欲しくないみたいなので、これで最後だから、ちょっと眉をそろえてあげようと思って道具を持ってきたから、それだけやってから帰るよ」そう言って、眉を切りそろえてあげた。そろそろこの人に切り刻まれることに慣れても良さそうなものだが、母親の刃にはなかなか馴れない。いつも新しい傷だ。

私は出来た人間じゃないから、最後に優しくなったりしない、
「じゃあ、暫くこないから、さようなら」
と部屋を出た。

認知症の人はこんなやり取りもすぐに忘れるのだろうか?
多分少しは印象に残っているのだろう・・・いや、やはり無理か。
私はしっかり傷ついている。いつも・・・

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