2022年9月22日木曜日

『プリズム』〜静かで透明感のある素敵な作品

 久しぶりに心が洗われるような透明感のある作品に出会った。

ちょうど朝ドラが悪評高き『ちむどんどん』をやっている時期で、なんとも不快で疲れるドタバタ作品をうっかり見てしまいげっそりした時だったので、本当に気持ちのよい心がしっとりする作品だった。浅野妙子さんの原作。


テラリウムとガーデンと植物たちが織りなす世界がとても綺麗に描かれている。森の中もいいが、綺麗に手入れされた植物が気持ちよく育っているガーデンも素敵だ。庭の手入れは本当に大変だ。虫はいるし、雑草はお構いなしに茂ってくる。陽のあたる場所や日陰を個性によって選んで与えてあげなければならない。でも手を入れてあげると正直にイキイキとしてくる。

役者さんたちが完成した世界を作り出しており、でしゃばらずに静かでみんな作品に寄り添っていてとても良かった。

皐月ちゃんがいうには、テラリウムの世界はそこに幸せを閉じ込め保存できる。壊されたく無い平和な世界。彼女が造るテラリウムの世界は陸くんの心に温かく語りかける。陸くんはその世界が好きだ。

陸くんは造園会社のガーデンデザイナー。だからテラリウムより少し大きな庭という世界を手がけている。植物を相手に造園する。けれど心の中の淋しい闇の部分が皐月のテラリウムに惹かれる。

悠磨さんは陸くんの大学の先生で世界中を渡っているガーデナー。陸くんは彼から植物のことを学び今の職業についている。当時陸くんとは相思相愛だったけれど、そのことが保護者に知られ、大学を追われた。

皐月ちゃんのお父さんはお母さんと離婚して、男性パートナーと暮らしている。お母さんは田舎で一人暮らし。お父さんを恨んでいる。皐月の周りは少し個性的だ。そんな人々との関わりを通して、皐月は陸くんを好きになり、陸くんも皐月を好きになる。でも二人とも結婚とかとに結びつけるのは嫌で、、、そんな関係を保っている。そこに悠磨さんが日本に戻ってきて登場し、プリズムのような三角関係が始まるのだが、みんなが今のそれぞれのあり方を尊重しているので、どろどろした感じがなく思いやりがあり、自然体を保とうとしている。

けれどその不自然な自然体に皐月が声をかける。「人のことばかり思わないで、もっと正直に自分を出そうよ。」と。「誰かのために誰かが我慢して欲しくない」と。

お父さんやパートナー、お母さんや陸くんのお父さんなど、みんな自分と向き合って少しずつ変わっていくのだが、特に三人の関係の終わり方がとても良かった。スーッとするほど気持ちよかった。三人のつながりは一層強く自然で、各々自分の生き方をまっすぐに進みながら、ガーデニングを通じて三人は時には共に仕事をし、更にシェアできる世界が広がっていく。『プリズム』とはその世界を思っただけで浮かんでくるぴったりなタイトルだ。

こういう生き方もあるかも・・と思わせてくれる作品だった。原由子さんのはっきりした歌声が心休まる映像と共にいつまでも耳に残る。

0 件のコメント:

コメントを投稿