2012年4月7日土曜日

弱音を吐こう介護日誌(24)〜香水騒動 〜ほろ苦いエピソード〜

母のホームでは隔週の金曜日はホームドクターの回診日だ。

一人で暮らしていた時から、病院通いはただ一つの大きなお仕事だった。
前の日からお風呂に入り、きれいにして緊張して病院へ行った。

その習慣からか、母は「医師に失礼があってはいけない、自分は汚くて、変なにおいがするといけないから」と先生への気遣いから今日は多量のオーデコロンを振りまいてしまったらしい。
シャネルの19番、さっぱりした香りのコロンだ。
ちょっとならとても爽やかなのだが、量を間違えるとえらいことになる。

ホームから電話が来た。
「I様が、下半身に香水を振りまいてしまったらしく、部屋の中が、強烈な匂いで充満して・・・臭いを抜こうとドアを開けると廊下がその臭いで満ちてしまった」「お昼には一緒にお食事する周りの人が食欲をなくしてしまうほど匂いがきついので、時間をずらした」とまで言われた。

私は、母が香水のボトルを自分のズボンにドクドクぶっかけて・・というように受け取ってしまい、ついに来たか!ととてもショックだった。
「今日今からそちらへ行くので、確認します」と返事をしたが、実際行ってみると、確かに本当にすごい匂いだった。

しかし、理由を聞くと、やはり私の予想通り、先生への気遣いから来るものだった。本人が色気が出た訳でも、狂ったわけでも、認知症が悪化したわけでもない。

「無香性のコロンに替えてください」と言われたが、無香性ではコロンにならない。
だって本人はその香りを認識して、安らぎを得ているわけだから・・・。
母にみんなが迷惑をした旨を伝えると、「どうして私に直接言わないのか」とひどく悲しそうだった。
「お母さんに気を遣ったのだと思うよ、そんなこと言われたら気分を害しちゃうからね。それに言っても忘れちゃうから私に一報しておきたかったのだと思う。証拠になるから」

覚えていてくれるか分からないけれど、こういう匂いはつけ過ぎは他人の迷惑になるんだよ。いつも同じ香りを遣っていると、その本人はその香りに麻痺してしまって、強い匂いでも分からなくなっちゃうの。それが匂いの性質ってものなんだけど・・・。
そう説明した。

もちろん、分かりっこないし、すぐに忘れてしまうだろう。
「これはお父さんが大好きな匂いで・・・お父さんがいつもいいにおいだねって言っていたの」
そうは言うのだが、実は私がフランスのお土産に買って来たもので、母の記憶はごちゃごちゃだ。

取り上げて欲しいと言ったホームの人は、事情を話したら「瓶を使い切るまで、好きにさせておきましょう。そのかわり終わったら補充しないでください」
というお返事に変わった。

分かっていただいて良かったが、初めの行動が先生への気遣いから出ていたことを当初頭ごなしに否定された事に私は娘として少々腹が立った。

日頃の行動から観れば仕方ないが、母も誤解されているな?と感じ、でもこういう人であることを少しでも分かってもらえたから良しとしよう。
ホームの方々からの誤解を少しでも解いて、悪意のないことを知ってもらって、母との関係が少しでもうまく行くようにするのが、私の役目かもしれない。

看護婦さんのお母様が認知症で苦労されたらしく、母の症状が少し悪化していることを彼女が指摘していた。
「そこを過ぎると早いですよ」その言葉が重くのしかかった。

学校から息子の悪さでしばしば呼び出しを受けた頃を思い出します・・・とホーム長さんと大笑い。
「いったい今度はどんな悪さをしたの?」

息子におばあちゃんに、、、私はいつになったら呼び出しから解放されるの?
周りがワルばかりだから、自分が優等生になっちゃったんだなあ〜とつくづく悲しいほろ苦い思いの私です。
お願いだから、シュッシュかけないで、シューでも駄目。本当に「シュ」くらいにしてね。
お願いよ。


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