2011年11月10日木曜日

台風娘帰国

我が家の長女はいつの間にか帰国したと思ったら、又いつの間にかシンガポールへ帰って行ってしまった。
でも、おばあちゃんに会ったし、多くの友人たちにも会ったみたいだし、同窓会や色々な会合に顔を出し、仙台や大阪や京都や東京でも色々な所を、つまり行きたい場所へは行って、日本を満喫して帰ったのだと思う。

驚いたのは、帰国当日にいきなり仙台へ行ったことだ。
まあ、後輩が東北大学で地震の研究をしているというから、彼女を訪ねて、震災の現状を自分の目で見て、多分海に向かって静かに頭を下げて・・・色々考えたのだと思う。

この子は小さな時から、自分で確認しないと気が済まない子だった。
レモンが酸っぱいのも、アイロンが本当に熱いのも、自分で確認した。
しかも注意している私の目の前で。

まだ二歳にもならない子が、お母さんが「熱いからね、あっちっちだよ。やけどするから絶対さわっちゃ駄目よ」と言えば、ニッコリして、「は〜い、あっちっち、こわいこわい」と言いながら母親の目の前で、人差し指をペちょっとなめて、私の顔をキラキラ輝いた大きな目でニコニコしながらじーっと見て、アイロンの底にピッと触った。「おぬし、侮れぬな!」その時そう思った。

直ぐに手を離したので、大やけどはまぬがれたが、大泣きした。
私は慌てて彼女を抱えて、台所へすっ飛び、水道水に浸した。もちろん、その後二度と同じことは繰り返さなかった。熱いものには気を付け、私の忠告は聞いた。熱いものは・・・

でも、レモンは別だった。
お料理に絞ってかけるためのレモンの切り身があった。いかにも美味しそうではあった。
「それ酸っぱいよ。しゅっぱいしゅっぱい」と言って私は口をすぼめた。「赤ちゃんがそのまま食べても美味しくないよ。」
「しゅっぱい、しゅっぱい」と言いながら、手がテーブルの上ににょきっと出た。そのアクションの速いこと!瞬間口の中に入れ、お味見をしてくださったのだ。ありゃりゃりゃ・・・
その時の顔は未だ忘れられない、赤ちゃんの味覚には大変厳しいものがあったのだろう。今までの最高傑作だ。そして、この世の物とも思えない恨みを全てそこに託して、怨念をこめてレモンを床に投げつけた。ペッ、ぺっ・・・
泣きながら本気でレモンを怒っていた。とても可愛らしかった。

その子が、ずっと自分の目で物を見て、自分の肌で感じ、空気を吸って生きている。
世界中を旅して、中国で暮らしたり、シンガポールで就職したり・・・そしてこの1月からはスイスでMBAスタート。
日本語、英語、中国語はペラペラ・・・そしてフランス語、スペイン語、オランダ語、多分ベトナム語やイタリア語もかなり分かるだろう。何処でも暮らせるに違いない。

『あっちっち』と『しゅっぱい』で自分で確認する、自分のことは自分で責任を持つ人生がずっと前からスタートしているが、これから先、今度は何を見て何を感じて生きて行くのだろう?

色々なことがあり、親離れが早すぎて寂しかったが、本当に逞しくて素敵な娘になった。
スイスの次は? 何処??

0 件のコメント:

コメントを投稿